仕事を終えてから勉強しようと、机で参考書を開く。 けれど、同じ行を何度も読み直したり、通知を見たあとに仕事のことを思い出したりして、なかなか先へ進まない夜があります。

少しでも進めたいのに、今日は参考書を閉じた方がいいのか。 そんなときに、集中できない理由を意志の強さだけで決める必要はありません。

集中できないときは、次の20分でできることを一つだけ変えるといいと思います。

ここからは、その20分で何を変えるかを切り分ける考え方を解説していきます。

この記事の目次

  1. 集中できない夜は、原因を一つに決めない
  2. 次の20分は、条件と行動を一組にして決める
  3. 眠気や不調が強い日は、勉強法より休む判断を先にする
  4. 仕事の続きを閉じてから、教材を開く
  5. スマートフォンは、意志ではなく距離で試す
  6. 課題を一問へ縮めて、次の20分を始める

集中できない夜は、原因を一つに決めない

「今日は集中できない」と感じると、机も端末も教材も変えたくなります。 けれど、一度に全部を変えると、次の夜も何が合わなかったのか分かりません。

先に見たいのは、集中が切れた直前です。 眠いのか、未返信の連絡が気になるのか、端末へ手が伸びるのか、それとも「今日は勉強する」とだけ決めて教材を開いたのか。 条件を分けて見た方が、次に試すことを選びやすくなります。

ここでいう切り分けは、医学的な原因を特定する方法ではありません。 今夜の集中が切れた理由を一度で当てるのではなく、次の一回で何を変えるかを決めるための記録です。

たとえば、教材を開いて10分後に通知を見たなら、次の20分は端末の置き場所だけを変えます。 仕事のメールを閉じた直後なら、メールへ戻る場所をメモしてから教材を開きます。 やることが多すぎて手が止まったなら、一問だけ解くところまで縮めます。

次の20分は、条件と行動を一組にして決める

原因を一つに決めなくても、次に何をするかは決められます。 「集中できたら勉強する」ではなく、「通知を見たら、端末を鞄に入れて20分だけ続ける」のように、状況と行動を先に結んでおく方法です。

この考え方は、目標と行動計画の関係を専門とする心理学者、Peter M. Gollwitzerと、社会心理学と健康行動変容を研究するPaschal Sheeranの2人が研究してきた実行意図に基づきます。 二人は、実行意図を次のように表しています。

“If situation Y is encountered, then I will initiate goal-directed behavior X!”

— Gollwitzer and Sheeran, 2006

これは、「状況Yが起きたら、目標に向かう行動Xを始める」という意味です。 二人がこの形の計画を扱った94件の独立した検証を統合したところ、目標達成には中程度から大きな正の効果があったと報告されています。

もちろん、この研究は、社会人の勉強中に集中が戻るかや、「端末を別室へ置く」といった方法を直接調べたものではありません。 それでも、集中できない夜を気合いで乗り切ろうとするより、今日の条件と行動を一組にするための考え方としては使えます。

たとえば、「同じ行を三回読み直したら、時刻と直前の行動を一行書く。その後は端末を鞄に入れて20分だけ続ける」と決めます。 これは研究結果そのものではなく、今夜の条件と行動を対応させて試すための提案です。

眠気や不調が強い日は、勉強法より休む判断を先にする

帰宅してから眠くて目が開かない夜に、タイマーや音楽を足しても、勉強が進むとは限りません。 眠気が強いなら、集中できる環境を作る前に、休息が足りているかを確認したいところです。

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、十分な睡眠時間を確保していても日中の眠気が続き、生活に支障がある場合は医師への相談を勧めています。

このガイドは勉強法を比べた資料ではありませんが、眠気や不調が続くときに、勉強方法を増やすより休息や相談を先に考える目安にはなります。

今夜だけ疲れているなら、その日は参考書を閉じて翌日に回してもよいと思います。 予定どおり進めない日があっても、勉強を続けられなくなるとは限りません。

仕事の続きを閉じてから、教材を開く

仕事のメールを閉じたあと、教材を開いても、頭の中では「明日の朝、あの件をどうしよう」と考えてしまうことがあります。 仕事を終えたつもりでも、次に何をするかが決まっていないと、頭の中で仕事の続きを閉じにくいのかもしれません。

2009年に発表された研究では、複数の仕事の課題を切り替える場面を二つの実験で調べました。 未完了の前の課題から注意を切り替えにくいと、その後の課題の成績が下がる可能性が示されています。

研究では、前の課題への注意が次の課題に残る状態を**attention residue(注意の残り)**と呼びます。 ただし、扱ったのは仕事の課題の切替で、資格勉強の成績やメモを書く方法の効果を直接調べたものではありません。

だから、「再開点を書けば集中できる」とは言えません。 しかし、仕事の未完了が気になる夜には、「資料は3ページ目から確認する」のように次に戻る場所を一行残してから教材を開く方が、何も変えずに始めるより試す条件をはっきりさせられます。

スマートフォンは、意志ではなく距離で試す

通知を見てしまうなら、スマートフォンを見ないように我慢するより、置き場所を変える方が試しやすいかもしれません。 勉強を始めてから何度も手が伸びるなら、意志の強さを責めるより、端末との距離を変えてみます。

2017年に発表された研究では、自分のスマートフォンを机上、ポケットや鞄、別室に置く条件を比べました。 参加者は端末を使わない状態で認知能力の課題に取り組み、端末が遠い条件ほど利用可能な認知能力が高いという結果が報告されています。

この研究は、資格勉強の継続率や成績を測ったものではありません。 端末を別室へ置けば、誰でも集中できると示したものでもありません。

それでも、端末が気になって教材へ戻れない夜には、次の20分だけ鞄に入れる、あるいは別の部屋に置くという試し方には理由があります。 端末を原因と決めつけるためではなく、置き場所を変えたときに読み直しや中断がどう変わるかを確かめるためです。

課題を一問へ縮めて、次の20分を始める

「今日は資格の勉強を進める」と決めても、どこまでやれば終わりなのかが見えないと、教材を開くまでに時間がかかります。 そんなときは、勉強時間を長く取ろうとする前に、終わりが見える行動へ縮めてみてください。

たとえば、次のように決めます。

  • 見開き一つを読み、要点を二行で書く
  • 過去問を一問だけ解き、解説を読む
  • 動画を10分だけ見て、分からなかった言葉を一つ調べる

しかし、短くすれば必ず集中できるというものでもありません。 それでも、終わりが見える行動にしておけば、次の20分で何を試したのかを確かめやすくなります。 続けられそうなら、もう一問だけ足せばよいと思います。

まとめ|集中が切れた直前の条件から、次の行動を決める

勉強に集中できない夜は、意志の強さだけで理由を決めない方がよさそうです。

次に同じ行を読み直したときは、時刻と直前の行動を一行残してみてください。 眠気なら休む。 仕事が残っているなら再開点を残す。 端末が気になるなら距離を変える。 課題が大きいなら一問へ縮める。

どれを選ぶかより、一度に全部を変えないことの方が大切です。 その方が、次の夜に自分に合う方法を選びやすくなると思います。