資格勉強のやり方がわからないときは、教材を探す前に、受験先の公式情報と自分の現在地を確かめます。そのあとで、最初に使う教材と「いつ、どこで、何を始めるか」を一つに絞る。最初から完璧な計画を作る必要はありません。
教材レビューを眺め、気になる本を何冊も比べていたら、結局一問も解かずに夜が終わることがあります。よい教材を選べば勉強が始まるような気もしますが、比較だけでは、自分がどこで止まるのかまでは分からない。だから僕は、本屋や通販サイトではなく、試験の公式ページを入口にするのがよいと考えています。
この記事の目次
最初の三行は公式情報から作る
資格によって、試験日や申込期間、受験条件、出題形式は大きく違います。まず開きたいのは、古い受験記や教材の紹介文ではなく、試験の実施主体が公開している最新の受験案内です。
ただし、ここで長い計画表を作る必要はありません。メモするのは、「試験日と申込期限」「出題範囲」「公式問題や見本の有無」の三行だけ。受験資格や本人確認などの条件があれば、その下へ一行加えるくらいで十分です。
日程がまだ公表されていない場合は、仮の日を確定情報のように扱わず、次回の公表時期を書いておきます。そうすれば、「いつまでに、何を学ぶのか」という教材選びの土台が見えてくるはずです。
この三行がないまま本を探すと、必要以上に範囲の広い教材や、現在の制度に合わない版を選びやすくなります。一方、期限と範囲が分かっていれば、「全部を教えてくれる本」ではなく、「今の不足を埋めてくれる本」を探せます。
数問だけ見て、「できない」を分ける
公式の例題や過去問題があるなら、一回分を最後まで解こうとしなくて大丈夫です。まずは数問だけ見て、問題文の意味が分かるか、答えの理由を説明できるか、どこで手が止まるかを確かめます。
点数だけを出すと、「まだできない」という大きな塊が残ります。けれど、その中身を分けてみると、必要な教材はかなり違う。用語が分からないなら入門説明が必要で、知識はあるのに形式で迷うなら、優先したいのは問題演習でしょう。
公式問題が公開されていない資格では、実施主体が示す出題範囲や見本と、候補教材の目次を照らします。これは合否を予測するテストではなく、教材選びの迷いを小さくするための現在地確認です。
僕がここで大切だと思うのは、人気や評判を見る前に、「自分はどこで止まったか」という手がかりを持つことです。評判は多くの人にとっての使いやすさを教えてくれますが、自分に不足している説明まで特定してくれるわけではありません。
一冊選ぶ。ただし、買わない選択も残す
現在地が見えたら、最初に使う教材を一つ選びます。一冊ですべてを終えると決めるのではなく、一定の範囲を試したあとで、説明の分かりやすさや問題の難易度を判断できる状態を作るためです。
たとえば、用語から止まったなら、範囲を広く浅く説明する入門教材が候補になります。一方、概要は分かるのに問題を解けない場合は、公式範囲へ対応した問題集を優先したいところ。動画、紙、アプリのどれがよいかは、通勤中に見るのか、自宅の机で手を動かすのかによっても変わります。
購入前には、対応年度、改訂情報、目次、見本ページを確認しておきたいところです。ただ、公式の無料教材や手元の一冊で最初の範囲を進められるなら、新しく買わなくてもよい。複数の教材を足すのは、「説明が足りない」「演習量が足りない」と不足が具体的になってからでも間に合います。
僕なら、人気ランキングよりも、先ほど止まった箇所へ戻れるかを見ます。「初心者向け」と書かれていても、見本を読んで先へ進めないなら相性がよいとは言えない。反対に、手元の教材で一問進められるなら、そこで比較を終えて着手します。
教材を決めたら、開始の判断を前日に済ませる
教材を一つに絞っても、「時間があるときに勉強する」だけでは、毎回いつ始めるかを考え直すことになります。そこで役立つのが、「もしXが起きたら、そのときYをする」と先に結びつける考え方です。
心理学者Peter Gollwitzerが提唱し、Paschal Sheeranとともにメタ分析で検討した「実行意図」に基づくと、目標を持つだけでなく、行動を始める状況と具体的な反応をあらかじめ組み合わせます。このメタ分析は94の独立したテストを統合し、目標達成や着手に関わる効果を報告したものです。
ただし、研究の対象は日本の個別資格や教材選びではありません。if-thenプランを作れば合格できる、と示した研究でもない。ここは分けて読んだほうがよいところです。
この研究を資格勉強の開始へ引き寄せて解釈すると、毎回「今日はやるか」を決めるより、始める場面と最初の一問を先に結んでおくほうが着手しやすい、と考えられます。公式情報、現在地、教材の順に確認する流れは研究結果そのものではなく、僕が資格勉強へ応用した順番です。
実際に書くなら、「火曜日、朝食の食器を流しへ置いたら、机で問題集の基礎問題を三問解く」くらいまで具体的にします。「やる気が出たら」ではなく、起きたかどうかが分かる状況を選ぶのがコツ。帰宅時刻が不規則なら、休日の朝食後など、比較的安定している場面へ移してみてください。
最初の一回が教えてくれること
最初の一回を終えたら、すぐに長期計画を作るより、合図が本当に起きたか、迷わず教材を開けたか、内容が難しすぎなかったかを振り返ります。始められなかったとしても、曜日、合図、量を全部変える必要はなく、まずは一条件だけ動かせば十分です。
合図そのものが起きなかったなら、場面を変える。合図は起きたのに重く感じたなら、三問を一問にする。始められたものの説明を理解できなかった場合は、実行条件ではなく教材を見直します。このように分けると、最初の一回は成功を証明する試験ではなく、次の判断材料になります。
もちろん、一回できただけで必要な学習量を満たしたわけではありません。その後で、試験日までの範囲、復習、模擬問題を含む計画を作ります。習慣化へ進むときは、勉強の習慣化には何日かかる?続けるための方法で、期間を断定せずに行動を記録し、調整する考え方も確認できます。
まとめ
資格勉強の最初の仕事は、教材をたくさん比較することではありません。まず公式情報で行き先を確かめ、数問から現在地を知り、その不足へ戻れる教材を一つ選ぶ。無料教材や手元の一冊で足りるなら、買わない判断も残しておきます。
最後に、「もしこの状況になったら、ここで、この一問を始める」と一文にしてみてください。僕は、最初の一冊を完璧に当てることよりも、最初の一回から次の判断材料を得られることのほうが大切だと考えています。
出典
- Peter M. Gollwitzer、Paschal Sheeran「Implementation Intentions and Goal Achievement: A Meta-Analysis of Effects and Processes」
用語解説
実行意図(if-thenプラン):目標を決めるだけでなく、「もし特定の状況になったら、決めた行動をする」と、行動のきっかけを先に結ぶ計画です。